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Pickup Artist Interview

宮大工パフォーマンス集団『HAZ project』

モノづくりからうまれるワクワク

文責:ツムテンカフェメンバー 曽根千智

気持ちの良いお散歩日和になった5月某日、京都太秦。
「あれ?たぶん場所はここなんだけど…」地図の住所が指す先は一見普通の学習塾。しかもシャッターが閉まっている。
「ほんとにここ?」「合ってるの?」「と、とりあえず行ってみよう!」
―おそるおそる扉を抜けると、そこは木の香の漂う大工さん達の秘密基地でした。

今回、訪問させて頂いた『HAZ project』は、
宮大工、彫刻家、フォトグラファー、パフォーマーなど色々なジャンルのクリエーターが集まって様々なパフォーマンスを行うクリエーター集団です。
彼らの活動の真相にせまり、ツムテンカク2013でのパフォーマンスについてお話をお伺います。

(インタビュアー:)グループ名の『HAZ project』ってどんな意味なのですか?
(HAZ project:)HAZの「H」は「Human」「Hand」「Happy」それぞれの頭文字で、「AZ」は人種や言葉、全てを大まとめにするAtoZの意味なんです。
イベントにちょこっと出られるようになればいいねって、そんなところから始まったんです。
まあ、今からの時代、まわりは既製品ばっかりになっていくと思うんよ。
何かを表現したり作ったりする時のライブ感がなくなってきてる。
だんだん機械化されて、今の子ども達はモノづくりの現場を見られなくなるんじゃないかって。
だから、小さなものでもいい。なんとか見せてやれないか、と思いました。
子どもたちを介して、そのお父さんやお母さんにもモノづくりを身近に感じてほしいね。
「HAZ project」が大事にしている「ライブ感」ってどういうものでしょうか?
私たち大工の普段の仕事はなかなか見せられないじゃないですか。現場は危ないしね。
でも実は現場外でも、危険な要素をそんなに削ぎ落とさなくても見せられる、本質的な部分が変わらずあるんです。
そういう部分を、「危ない」と言って一概に遠ざけてしまうのはもったいないなあ。
なんでも実際にやってもらうことに一番意味があると思っています。

確かにモノづくりの現場に触れる機会はめっきり減りましたね。
(パフォーマンス集団を結成した後)で、何する?ってなってまず掃除ね。
え?そうじ?(一同笑)
うん、掃除。
最初はイベント会場もないし、皆の輪を作ろうと、まずは掃除から始めようと思ったんです。
お店やクラブで人を紹介すると、お金かかっちゃうでしょ?そうなるとお金ないから行けないわ、とかなったりして。
モノづくりしてる若い人はそんなにお金持ってないからね。
クリーンミッション(※『HAZ project』が月1で取り組んでいる清掃活動の名)で、掃除という形にすれば、お金がかからないし、しかも地域もきれいになる!
掃除という活動が、色んな背景を持つ人が出会う受け皿になるんよ。
掃除が終わってからも集まって、みんなでさらに話を深めたりしてね。
だんだん、「次は友達連れてきていい?」と輪が広がるのが面白いなあ。
イベントうんぬんよりも、掃除を通じて出会いのきっかけを作りたかったんです。
宮大工という職業と「HAZ project」のパフォーミングアーツは全くの異業種で、
一緒に活動する中で折合いがつかないのではないかと疑問に思ったのですが、
そもそもパフォーマーとの出会いは?
今の形になったのは最初の掃除の時の出会いの延長線、ですかね。
集まった人はみんな、頭が固くない人ばっかりだったから、お互い意地になって譲れない部分というのがなかったんです。
僕たちは小屋を作るから、じゃあパフォーマーのあなた達は中で何かやってよって、
反対に、パフォーマーの側から、こんなの作ってよっていう要望もあってね。
お金じゃない、損得じゃない、対等なやり取りができたんです。
パフォーマーの「魅せる」という行為に実際に向き合ってみて、どうですか?
上手くいくという確信はなくて、今も探り探りなんです。
結果が全てじゃなくて、そこに至るまでの考えの違うもの同士が絡み合って、何かを生み出す過程が大事だと思ってます。
まあ、見られてる側の人にとっては結果が全てだとは思うんですけどね。
だから、その兼ね合いは確かに難しいところではあります。でも一番核にあるのは、面白ければよい、楽しければよい、ということです。
そこに向かって、みんなそれぞれ形も色も全然違う中で、頭と足が、あるいは身体の横と横かもしれないけれど、
もぞもぞしながらパズルみたいにくっつくイメージでやっています。

では、フォトグラファーの松本さんにお伺いします。
「HAZ project」として大工さんや、パフォーマーとの共同作業の中で写真を撮るときと、
現在されてるお仕事として写真を撮るときと、どんな感覚の違いがありますか?
僕は普段、広告写真を撮っているんだけど、広告だから、反応はすぐには返ってこないんです。
でもね、「HAZ project」では、その都度すぐに、しかも直に答えが返ってくるんです。
それがやっぱり面白いなあ。
ただ撮ってるだけなのに、写真ってすごい感謝されるんですよね。
「この仕事って人のためになってるんや」「カメラ一台でこんなに人とつながれるんや」
「これだけ人を笑わせられるんだ」とか、カメラの可能性をよりリアルに感じるようになりました。
活動を通して、子どもたちに伝えたいことがあるそうですね。
まずね、分かり易いものが伝われば良いなと思っています。
見えない部分を、分かり易く見えるようにしたいなと。
宮大工の人に会ったことないって、言うじゃないですか。
昔は大工さんってなりたい職業ナンバー3に入っていたのに、今はもう子どもたちの目に見えない職業になってきているんです。
だから僕らは少し前に出て、子どもたちにモノづくりに触れてもらって、モノづくりを身近に感じてくれる人が増えてくればいいな。
いつもは裏方の人が、ちょっと前に出てもいいんじゃないかなあ、って思うんですよ。
ツムテンカクではどんなパフォーマンスを見せていただけますか?
小屋を即興で組み立てたりばらしたりするのと、カンナなどの道具体験を考えています。
あと、耳かき作りや皮小物のワークショップもやろうかなと。
「てづくり」の現場を見せられればなと思います。
パフォーマーと見ている人、その場にいるみんなが一体になれればいいなあ。
やったことないので、どうなるかは分からないんですけどね。前例ないですし。
だからこそ誰もやったことないことに挑戦したいと意気込んでいます。

— 誰もやったことのないこと、ですか。とっても楽しそう!当日が待ちきれませんね。
『HAZ project』さん、本日はご多忙の中ありがとうございました!